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2013年4月26日金曜日

古村一雄さんへの手紙

 
 古村一雄 さま

 こんなかたちであなたにお手紙をさしあげることをお許しください。
 私は23日の映画試写会で『渡されたバトン さよなら原発』を観ました。そして、感動と感銘をおぼえると同時にある悔恨と悔悛の情にうたれたのでした。
 感動と感銘の方は、あなたといっしょに行ったこともある新潟県巻町に起こった原発建設計画を30年以上かけて白紙撤回まで追い込んだ住民運動と住民の民意の正しさと力のことでした。
 悔恨については浪岡町と青森市との平成の合併話がふってわいたように起こった時、あなたに何度も何度も、青森市側から合併の是非を問う住民投票の実施を求めるように住民運動を興してほしいと呼びかけれられたことを真面目に、しかもそれがどんなに民主主義にとって大事なことかを考えることをしなかったことです。それが、結果的には一方的な青森市からの合併抱きこみ工作により、旧浪岡町の一部上層部の暴走によって、合併の是非は住民投票の結果によって判断すべしとの民意が踏みにじられたまま、両議会の多数決によって、合併決議がなされ、その手続きの瑕疵についても争われましたが、県議会でも無視された格好で、あなたが合併をさし戻そうと町長になってからの46日間の抵抗も空しく、平成17年3月31日をもって浪岡町は日本の地図から消えたのでした。その間、私は旧青森市の住民として、ただただ事態の推移を見守るだけで、何ら具体的な行動を起こし得ませんでした。それが、この映画を観て胸に突き刺さった悔恨の情です。
 そして、それが悔悛に変わっていきました。私はあなたのことを書いた『浪岡町長46日間の反乱』を家に帰ってから読み返しました。この本は、4年前の平成21年2月に浪岡町を地図から消した首謀者の佐々木誠造元青森市長の6選出馬は我慢ならないという思いで出版したものです。私の悔恨と悔悛の情からうまれたものでした。
 『浪岡町長46日の反乱』に目を通しているうちに、新たな悔恨と悔悛の情につき動かされたのでした。私に地方自治の本旨と民主主義、そして民意の正義(尊重すべき重要さ)について、教えてくれたあなたや「住民投票を求める会」の活動に対し、心から敬意をはらうとともに、「住民投票を求める会」の運動はまだ終わってはいない、これから私も一緒に、旧青森市に住むひとりの人間として、旧浪岡町の「住民投票を求める会」の活動を支援し、旧青森市の地域からも旧浪岡町の分町を求めて「住民投票を求める会」の活動を粘り強く展開していかなくてはならない、とそう思ったのでした。
 これからの日々、私は青森にうまれ、青森に育てられ、青森に戻って来て、青森で親になり、祖父となったいま、青森で死んでいこうと決めました。それだけに、日本を二度と戦争するような国にしないように、青森を放射能の危険から守るために、そしてあの合併がどうだったのか民意をたしかめ、これからの禍根としないように、死力を尽くしたいと考えています。そして、私に多くの示唆を与えてくれたあなたと「住民投票を求める会」に、どれだけのことができるかわかりませんが、失われた8年を取り戻すためのご恩返しをしたいと思っています。
 あなたは平成17年4月1日、次のように語っています。
 「住民の意思が尊重されない合併なんて、民主主義と地方自治の否定だ。この合併劇で自分は多くのことを学び、大衆から教えられた。自分は生ある限り、住民自治の烽火をあげ、獅子身中の虫として、巨悪に抵抗し続ける」
 あなたは、平成17年の市長選挙では敗れたものの、平成21年の選挙では巨悪の佐々木誠造をやぶり、先般の平成25年の選挙では再び、巨悪を陰で支えた元副知事の蝦名武候補を粉砕しました。
 しかし、それなのにあなたが自らの生命を賭してめざすとした分町はいまだ実現されていません。あなたは、「民意に終わりはありません」と平成17年3月31日、役場で職員を前に、お別れの挨拶で結んでいます。
 このたびの選挙で、とりわけ旧浪岡町地区での大量得票があったと想定されるなか、再選された鹿内市長はマニフェストのなかで、住民アンケートには言及しているものの、住民投票や分町問題には直接的に触れていません。この8年間の中で、「求める会」の海老名徳太郎会長をはじめ多くの方たちが志半ばで亡くなられました。
 くしくも、試写会の前日、4月22日には青森に雪が降りました。「なごり雪」ならぬ、あれは「求める会」の亡くなられた方たちの「無念のなみだ雪」だったのだと、私は映画を観たあと、『浪岡町長46日の反乱』を読みなおして、つくづく感じたのでした。
 鹿内市長をはじめとする青森市が、あなたに対峙する新たな巨悪にならないように祈りながらも、私もあなたと同じように獅子身中の虫のひとりとして、青森の地でも「民意に終わりはない」ことを実証するつもりです。(2013年4月25日)

 笹田隆志

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