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2012年5月7日月曜日

椎名誠「国境越え」と池澤夏樹「氷山の夏」

久しぶりに二冊の本を読んだ。県図書に返却予定日なのにまだ3分の1も読んでいなかった。読む時間がなかった。連休前から、同人誌に出す小説の原稿締切(5月5日)が迫っていたからだ。結局、ほかの原稿は5日に提出し、小説の方は一日遅れの昨日となった。それに、昨年結婚した娘が里帰りで3日の昼に新青森駅に到着して、帰京する5日の夜まで、なんやかやと忙しかった。そんな関係で、とても返却日前に読む余裕などなかった。それでも、昨夜は小説を完成させた達成感と解放感で自分よりはるかに優れている著名な作家の本など読めたものではなかった。夕食後、冴えない川柳を2句作って宿題として投句するのが精一杯だった。
 女房を職場に送っての帰り、図書館により、そのままデスクに腰かけ、返却予定の本を読むことにした。
 椎名誠の『国境越え』は雑誌に連載した写真と短篇小説の写文集。といっても、写真の方は、数ページに1枚という感じで、見開き1頁をつかってあった。短篇の本文と関係ある風景、媒体を撮ったものだ。写真も文も椎名誠の作だ。「南の島のライオン」の中の表現で気にいったところ、「触角を失った昆虫」、「粘膜化した暑さ」、「牛の口のなかにいるような」など。「眼の中の蚊」とは飛蚊症のことだった。「国境越え」はアンデス山脈を越える物語。
 池澤夏樹の『氷山の夏』は冒険少年成長小説。密航者の少年ジンは、南極の氷山を曳航してオーストラリアのフリーマントル港まで運ぼうというシンディバード号に忍び込む。厨房の助手と船内新聞の記者の職をもらい、氷山の捕獲という計画とその実行の現場を体験する。ジンはシンディバードで南極の海と氷に翻弄されながら、乗組員や研究者たちとのふれ合いの中で成長していく。アイリーンとの恋も芽生える。氷山の箱舟は、曳航途中、中央の亀裂により、消失してしまう。この作品は3.11大震災前に新聞に連載されたことの意義は大だ。
 気に入った表現を並べてみる。 「暴れ回る国際資本の動きを凍結し、もっと穏やかな経済を」、「開発と浪費の悪循環を絶つ」、「社会を冷却する」、「未来というものはいつだって混乱の向こう側にあるものだ」、などだ。それに、「顔が痛い」「寒いということはそういうことである」というところで、長春の冬のマイナス26度の体験を思い出した。
 昼には戻るつもりが、結局、読み終えるまで居てしまった。3時過ぎであった。

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