カバにはひとりの親友がいた。それまでのカバはいつもひとりだった。カバの孤独なこころを癒してくれたのが、小学4年の時に転校してきた彼だった。カバに地球と宇宙の起源と歴史、そして人類の過去、現在、未来について教えてくれた。とくに自らの現在をいかに生きるかによって、未来も変えられると諭してくれた。小学校を卒業までに、彼と何晩同じ布団にくるまって、二人の過去、現在、未来を語り合ったものか。中学と大学は別々だったが、カバも彼も25歳までに帰省し、青森で就職した。
たがいに結婚し、家庭をもち、子供が生まれるにつれて会うことも少なくなったが、カバには彼が何を考えているのかわかるような気がしていた。
48歳のとき約束した。定年になったら、温泉付きの別荘を共同で買って、そこでのんびり好きなだけ語り明かそうと。しかし、彼は12年辛抱しきれなかった。頑健で、辛抱強いはずの彼は半分で生きることをやめた。カバは彼の悩みが分からなかった。
彼が自殺する一週間前にカバは職場に電話した。彼は今までになく、冷たく、とりつく暇のない応対だった。彼の精神は明らかに病んでいた。カバはそれを見抜けなかった。カバの誘いを拒絶する理由が見当たらなかった。彼はそこまで追い込まれていた。カバはそれに気づかなかった。
彼はカバに助けを求めていたのかもしれなかった。彼の異常に気付き、すぐに駆け付けるべきだった。土曜日でも、日曜日でもだ。
カバはその週末、野球の試合で仙台に行っていた。親友の命より大事な野球なんて、カバは大馬鹿だった。それより、命より大事な仕事ってなんだろ、命より大事なプライドって何だろうか。
彼にとって、文学とは何だったんだろう。カバに小説を書くことを勧め、カバに小説を書く楽しさを教えた彼が、どうして夢を途中で放棄したのだろうか。いったい、文学で何が救えるというのだろうか。答えを求めて、カバの今年がはじまる。未来へと続く、道を求めて。

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