カバは市民の立場で、大学で7年間も工学を学んだことを少しでも活かそうと、退職して浪々の身となったことから、少しでも市民の役に立つことがあればと、友人の事務所の二階を無償で借りて、原子力防災研究所を設立した。もちろん自分で資料を調べ、勉強して必要ならばそれを市民に役立ててもらおうという趣旨である。
カバは34年間、自治労青森県本部で主に自治体労働者の賃金・労働条件の維持改善のための調査や団体交渉の仕事をしてきた。その一方で、自治労が主導してきた1984年以降の六ヶ所村の核燃サイクル施設をめぐる反核燃サイクルやその後の反原発・脱原発のたたかいを国民の安全を守る立場からライフワークとして取り組んできた。
自治労も1986年のチェルノブイリ原発事故以降、半径30キロ圏内が立ち入り禁止区域となったことから、原子力防災の課題の研究をはじめ、各県から中心的に活動を担ってきた担当者で委員会をつくり、国の原子力災害賠償法の改定や立地県や自治体の原子力防災訓練などの政策課題についても提言をしてきた。カバはそのメンバーのひとりとして、後年は自治労の脱原発ネットワークのアドバイザーとして市役所に転職するまで委員を続けてきた。
それだけに、カバには今年3月11日の大震災とそれにひきつづく福島第1原発事故には大いに思い入れがあるのだ。チェルノブイリ原発事故のあと、日本でも再処理工場や原子力発電所で大事故が起こりうることと、その場合、EPZは30キロ圏以上に及ぶことを何十回、何百回訴えてきたことか。その影響を二次的にうけるのは60キロ圏内ということになり、六ヶ所でいえば青森市もその圏域にはいるのだ。ということは、当然に立ち入り禁止区域の住民を受け入れなければならないことになる。役場も設置しなければならないし、学校も増設しなければならなくなるのだ。仮設住宅だけでなく、雇用の受け皿も必要となる。
そのことを青森市は国や県任せではなく、自らの自治体の責務として覚悟しなければならないのだ。それでも、六ヶ所や東通や大間は対岸の火事として傍観していていいのだろうか。六ヶ所の再処理工場や、東通・大間原発に市として反対を表明しないのなら、最低限そこが問題だと思うのだ。
5月から事務所にいるが、だれもカバの意見を求めに来る市民はいない。カバはこの原子力防災問題では共著だが、自治労から本を何冊も出し、1986年には自費出版だが「下北半島核景色」という単行本まで出しているという専門家だというのにである。でも無名の市民研究家でもいい。そう思って頑張っている。
痛風の痛みがとれた今日、驚くべく事実がまた明らかになった。一つは、福島の農家のコシヒカリから基準値以上の放射能セシュウムが発見されたということだった。カバは今年の福島産のコメは大丈夫なんだろうかと心配していただけに、これが拡がらないことと風評被害が広まらないことを祈る。
もう一つは、国会ではじまった国会議員による事業仕分けで、もんじゅと核燃サイクルの廃炉・廃止が議論されたことである。世論だけでなく、与野党の議員での審議ですら、もはや高速増殖炉と核燃サイクルは不要・無駄との仕分けがなされようとしているのだ。当然と言えば当然なのだが、一方、青森県はどうだ。原子力村の御用学者を委員長に検証委員会の報告を形通りにまとめさせ、それを錦の御旗に再処理工場と原発の稼働再開をさせようと目論んでいるではないか。原子力防災については、いまになっても、大事故は起こらないとの妄想をいだき、ゆすり・たかりの構造は変わっていない。情けないかぎりである。
最後に、環境省の課長が、福島市民から送られてきた汚染土壌を線量が低いことから、部下の職員の自宅近くの空き地に捨てたというのだ。規制する側の監督官庁がこんな具合では、今後の汚染処理についても信用できないと言わざるを得ない。
カバは1986年4月26日から核戦争の恐怖から、再処理工場の爆発の恐怖に変わった。小学校の時、戦争映画を見て、アメリカやソ連が攻めてきたらどうしようかと、眠れない日が続いた。それが、高校時代からは核戦争に変わった。広島・長崎に落とされた原爆が青森に落とされる夢を何度もみた。大江健三郎の広島ノートを読んで泣いた記憶がある。それ以来、大江健三郎の本は欠かさず読んだ。
核戦争の恐怖が、原発・再処理工場事故による核爆発の恐怖にかわったいま、大江健三郎は「さよなら原発」に立ち上がった。カバも中国から戻って、漸く惰眠から目覚め、この問題だけはゆるがせにできないと思っている。

1 件のコメント:
「市民の立場で」の大切さ。昔、議員と言う立場で「反核一直線」できた人もいた。
しかし、立場が違うとそれまでの主張を押し通し、継続していくのは難しいものなのだろうと最近知った。
「するか、しないか」だけ。
カバさんには「市民に役立ててもらおう」との思いの重要性をしかと自覚し貫いてほしい。
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