青森県内の原子力施設の安全性を検証・評価するために県が委嘱した委員による「県原子力安全対策検証委員会」は、3.11福島原発事故を受けて、原子力だけでなく、地震や津波など各分野の専門家13人の委員により今年6月に発足し、これまで計8回にわたり会議を重ねてきたようだ。そして、その報告書を11月10日正午、委員会の田中委員長が三村知事に提出した。
新聞報道によると、報告書は東通原発、六ヶ所再処理工場、大間原発の災害時の電源確保や資機材整備、津波防護措置などについては、「対策が効果的に機能していくものと考える」、「対策として考え得る計画がなされている」などと記述しているようだ。ストレステストの内容解析や具体的な施設内の詳細な検証もしていないなかで、このように安全対策は妥当との見解をまとめて報告するとは、学者の良心に恥じないのだろうか、と検証委の委員の見識を疑う。
しかも、福島第一原発事故の事故原因調査が終わっておらず、しかも事故そのものの収束がなされていないのに、何をもって安全対策は妥当と言いきれるのだろうか。事故原因の分析なくして、事故後の安全対策は講じられない筈である。国に先駆けて、運転再開のゴーサインを出させるための形式的な諮問と答申としか受け止められない。これでは、県知事の県民の原子力事故に対する不安解消のための方策と、万一事故が起こった時の責任逃れとしか言いようがない。
福島原発の事故前の安全対策と県内原子力施設の安全対策はどこが違うのだろうか。青森県内の原子力施設で事故が起こったら廃炉・廃止すればそれですむというのだろうか。そんな怒りもこみあげてくる。どこまで、青森県民を馬鹿にすれば気がすむのだろうか。福島第一原発事故で住むところを、家族・生活・人生そのものを失った福島県民のことを考えて、田中委員長はじめ委員はこの報告書をまとめたのか、心の底から問いたい。
カバは以前2年間、知事から委嘱を受け青森県原子力政策懇話会の公募委員を務めたことがあった。そのときの座長代理がこんどの田中委員長であった。あのときも、カバは過酷事故を想定し、原子力防災対策をきちんと講ずべきだと主張した。田中委員長はそのときも、東大の教授として、東京電力・東北電力などの電事連や日本原燃の技術力を擁護する立場で対応していた。
カバは田中委員長の福島第一原発事故に対する謝罪と反省、そして総括がないままに、青森県内の原子力施設の安全対策は妥当であるとする報告書をまとめあげ、検証委員会の委員長として知事に提出し、県民に報告したことを断じて許すものではない。
もしも、こののち、下北半島を中心震源とする大地震が発生し、六ヶ所村の再処理工場や東通原発で福島第一原発のような大事故が発生したとき、田中委員長や他の検証委の委員たちは、青森県民に対してどんな謝罪をするのだろうか。いや、死んでお詫びするくらいの覚悟があって、この報告書をまとめたのであろうか。
あまりにも拙速で、出来レースの感があるこの報告書をにこやかに受領する県知事もいい面の皮だが、こうしたセレモニーを黙認することはできないと思って、カバは昨日午後4時、県庁にでかけた。唯一、この日の報告書提出に抗議し、抗議文を田中委員長と県に送付した核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団の浅石紘爾代表(弁護士)の記者会見につきそうためだった。
浅石団長が記者会見でのべたのは、以下の内容だった。
① 検証委員会の委員長の田中教授は、福島第一原発事故の要因のひとつともいえる、原子力ムラの頂点にいる学者のひとりであり、そうした人を検証委の委員長にすること自体、検証委そのものが第3者機関たり得ない証拠である。したがって、委員長の人選も含め、あらためて反対側の委員も入れて、委員を構成し直して、検証を時間をかけて、国の事故調やストレステストの結果の検討を加えながら検証すべきである。
②東通原発など県内原子力施設の周辺において活断層の存在が指摘されていることから、地震震災等のさらなる検証が必要である。
③今回の検証委の報告は、上記の理由により、あまりにも拙速であり、県民の理解を得られないので、すみやかに撤回し、委員会を再構成してあらためて報告書を時間をかけて提出すべきである。
「さよなら原発・さよなら核燃」の青森県とするべく、カバはこれからも力をつくしたいと県庁の廊下を歩きながら考え、このときも足の痛みを忘れていた。

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