『プルトニウム』
1-3 プルトニウムから出る放射線
それぞれの放射性物質の性格を知るうえで重要な指標の一つは、その半減期である。半減期というのは、元素の寿命を測る尺度である。放射性物質は放射線を出しながら崩壊していくから、無限に存在し続けるのではなく、少しずつ他の元素に変わっていく。半減期とは、放射性物質の元の量の半分が崩壊してしまうのに必要な期間である。つまり、一半減期がすぎると、元の量の半分が残る。二半減期で元の量の4分の1、三半減期で8分の1が残ることになる。10半減期が過ぎると元の量の1000分の1以下しか残らず、20半減期で100万分の1以下となる。
プルトニウムのおもな同位体の半減期は次のとおりである[1]。
プルトニウム238 88年
プルトニウム239 2万4000年
プルトニウム240 6500年
プルトニウム241 14年
プルトニウムのさまざまな同位体の重量当たりの放射能は、その同位体の半減期に反比例する[2]。
プルトニウム239以外で多量に使われている唯一の同位体はプルトニウム238である。少量の電力を提供する目的で人工衛星などで使われている特殊な発電機の熱源として利用されている。プルトニウム238は単位重量当たりにしてプルトニウム239の300倍の放射能をもつ。プルトニウム238の半減期がそれだけ短いのである。
プルトニウム239は崩壊の際にアルファ粒子を出す。アルファ粒子はヘリウムの原子核と同じく二個の陽子と二個の中性子をもつ。アルファ粒子を放出した後に残る原子核もまた放射能をもつ。この原子核とはウラン235である。
この崩壊は、次のように表すことができる。
プルトニウム239 Pu239→ ウラン235 U235 + アルファ粒子 α
プルトニウム239の崩壊は、若干のガンマ線の放出をもともなう[3]。
このようにプルトニウム239が崩壊すると、プルトニウム239の量が減り、ウラン235の量がそれだけ増える(ウラン235もまた崩壊系列と呼ばれる流れに沿って放射性崩壊をして次々と別の元素に変わっていく。しかし、ウラン235の半減期は約7億年で、プルトニウム239の2万4千年よりはずっと長いから、ウラン235の崩壊が起こる前に、基本的にプルトニウムのすべてがウラン235に変わってしまう[4])。
1kgのプルトニウム239は、約63キュリー(約2兆1000億ベクレル)程度の放射能をもっている。( Pu239
1gで210億ベクレル、1mgで2100万ベクレルの放射能)
プルトニウム239は、ガンマ線が弱く、またアルファ線(プルトニウムはおもにアルファ線を放出する)はガンマ線と異なり、飛程が短いため検出しにくい。これは特に少量のプルトニウムの場合にいえることである。ただし、そのような少量でもプルトニウムは致命的でありうる。
[2] 正確にいうと、ある核種の重量当たりの放射能は、その半減期と原子量を掛け合わせたものちょうど反比例する。プルトニウムのさまざまな核種はほぼ同じ原子量をもっているので、原子量の差の影響は、この場合無視できる。
[3] プルトニウム239のほとんどの崩壊形態の場合、できたウラン235は余分なエネルギーをもった励起状態にある。このウラン235の原子核は、ガンマ線の光子(言い換えると電磁エネルギー)を1つまたはそれ以上出して、そのエネルギーのもっとも低い「基底状態」に移る。したがって、プルトニウム239は少量のガンマ放射能ももつ。
[4] プルトニウムの崩壊によってできるウラン235の放射能の総量は、元のプルトニウムのそれよりずうっと小さいということに留意されたい。プルトニウムのそれぞれの原子はウラン235の原子となる。しかし、ウラン235の半減期はプルトニウムのそれの約2万9000倍であるから、崩壊はそれだけゆっくりしており、比放射能(重量当たりの放射能)もそれだけ小さい。4㎏のプルトニウムの入っている核兵器の場合、その放射能は約250キューリーである。このプルトニウムが崩壊すると、その一部はヘリウムガス(アルファ放射線)として逃げ出すから、4㎏弱のウラン235ができるが、このウランの放射能の総量は2万9000分の250キュリー、つまり0.01キュリー以下となる。

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