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2013年7月5日金曜日

時雨庵での半日湯治

 
 今日は7月5日金曜日です。暦をみたら前日の4日は米国独立記念日でした。七夕まであと二日です。朝からの雨が、昼には雨もすこし小降りになってきました。
 昨日は一カ月半ぶりの湯段温泉「時雨庵」の日でした。一昨夜の恵みの雨もあがり、大鰐インターで待ち合わせをし、参院選挙公示日のポスターが杭打ちされ並ぶアップルロードを岩木山へ向かったのです。
 時雨庵のメンバーは鯖石の茶人と高畠のキンジャムさんとカバの三人だけ。他の茶話会の仲間たちには内緒にしています。茶人は津軽の殿様の父君と縁のあるひとだが、いまは娘が南部の殿様に見出され、近習として勤めているうちに、その娘の親であり、話題豊富で姉さん気質の茶人のことも殿様の知るところとなって、二年ほど前から月に一度くらい殿様が鯖石の自宅を訪ねてくるようになったということで、その日は手料理をこしらえ酒茶宴でもてなしているとのことです。一方、キンジャムさんは地方公務員を退職後、家督として継いだ高畠の田畑でリンゴを栽培し、水田を耕す専業農家です。カバとは労働組合の縁で知り合いになった二十五年来の友人です。検査技師をしていた茶人が中心となって、組合とは別に気のおけない仲間数人が集まって茶話会という親睦会がつくられ、それにカバにも声がかかったのでした。
 あれから二十五年近く、亡くなった人もいますし、離れて行った人もいますが、いまは十人ほどのメンバーで相変わらず年に二回ほど、全員が集まって旧交を温めています。おもしろいことに皆選挙や政治が好きでない人が多かったのに、二十五年経ったいまメンバーに県議一名、市議二名もいるのですから不思議と言えば、不思議です。この茶話会のメンバーのうち、時間が自由になる先の三人で、ふた月に一度の平日、真冬をのぞいて時雨庵での半日湯治の会を楽しんでいるのです。三人はいまや定職がなく、キンジャムさんも畑から抜け出して参加してくれています。
 湯段の「森のイスキア」のすぐ手前にある時雨庵は、いまやかの有名な「奇跡のリンゴ」の著者と小学校同期の女将がやっている隠れ家的な宿で、大小2つの浴室と三部屋だけの小さな温泉宿なのです。去年までは女将の母も宿におりましたが、いまは女将ひとりで細々と営業しています。
 カバは毎月にでも、毎週にでも、時雨庵に行きたいのですが、殿様の来訪準備で何かと気ぜわしい茶人と、農作業に忙しいキンジャムさんの合い間をぬっての半日湯治とあって、二カ月に一度とあいなった次第です。
 宿につくと、荷をほどき、珈琲を飲み、一服つけてから温泉につかります。まず、湯にはいり、すこし温まってから、ヒバの湯台に腰かけて、体を洗い、髪をきれいにし、髭を剃ります。そして、今度はゆっくりと肩まで湯につかります。五分ほどじっとしていて、といってもキンジャムさんの近況報告やら、リンゴの作育状況などの話に耳を傾けています。湯槽の縁に腰かけ、浴室に入りこむ風を背中に受けながら、今度はカバがキンジャムさんへ、前回以降のできごとを語ります。
 こうしてゆっくり30分は温泉の湯気の中にいます。茶人はとなりの小浴室に入ります。昼食は女将の手料理の膳です。蕨、ミズ、蕗、などの山菜、ジャガイモとトマトのチーズ蒸し、茄子のシソ巻き味噌あえ、焼き魚、ホタテと生エビの刺身、それにデザートのぶどう3房他が膳の中に小分けされています。赤と白味噌を混ぜた味噌汁もおいしいのです。三人とも完食でした。
 食後は煎茶を飲みながら、茶人が南部の殿様の話、カバが青森の殿様や浪岡の殿様の話、キンジャムが平賀の二人の旗本の話をします。南部の殿様の智を隠したトップセールスの話や博学博識ぶりと頭の回転の速さを教えてくれます。カバは殿中で嫌がらせを受けている青森の殿様と理念にもとる足引っ張りをしている旗本の悪行ぶりを語り、津軽にあって津軽の殿様には与せず、かといって南部の殿様とも一線を画した立ち位置を堅持し、青森の殿様とは盟友でもある浪岡の殿のことも話題にします。平川の二人の旗本といちばん近いキンジャムは、この二人の旗本のことが気になる様子で、平賀・平川のみならず津軽や国の将来についても心配の様子です。
 三時に珈琲とお菓子がついて二千百円は安いのです。半日湯治はこの日もカバたちひと組だけだったのです。ほんとうに贅沢な半日湯治です。

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