杜甫 「成都府」
だんだんにかげりながら夕日が
私の旅の衣裳を照らしている
山と川と いろいろの所をすぎて旅して来たが
いつしか天の涯に来ている
出逢うのは見知らぬ人たちばかり
故郷に帰れるのは何時の日のことか見当もつかない
大江は東に向かって流れている
旅に出てからもうずいぶん日数もたった
重なった城郭を立派な家屋がうずめている
冬の終わりというのに樹木は青く茂っている
にぎやかなことさすがに名高い都会だけのことはある
簫を吹きならし それにまじって別の笛の音も聞こえてくる
素晴らしい所だとは思うが しかし 私には気にいらない
私は腰をかがめて川の橋のあたりを眺める
鳥たちも雀たちも 夜になったのでそれぞれねぐらに帰った
故郷の中原は茫々とはるか彼方だ
三日月が出ているが空の低い所に見え
たくさんの星がキラキラと光を争っている
昔から旅するということはいつもあったのだ
私だけがこんなにひどく悲しい思いをすることもないのだが
註
成都府;五言古詩。原題も「成都府」。成都紀行の最後、第十二首。

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