佐々木英明からギリシャの映画監督テオ・アンゲロプロスのことを初めて聞いた。彼の自作詩朗読会台本「明日の長さについて」を読んで、朗読会での映画のMDで流れたナレーションと少年の会話(ギリシャ語)がエレニ・カラインドルーの音楽と併せて、どうして英明の詩とマッチしていたかがよくわかった。英明の言葉を借りれば「詩を覚悟した詩人の一日をドキュメント風に、しかも詩情豊かに綴った」この映画の字幕スーパーから引用された脚本は素晴らしい。さすが池澤夏樹だ。
夏。荘厳な白亜の別荘(あるいはアレクサンドルが少年時代を過ごした家)。観音開きの鎧戸がわずかに開いている。カメラがその窓に近づいてゆく。ナレーションが少年の会話を伝える。
「アレクサンドル、島へ行こう」
「どこへ?」
「島だよ。海の底で古代都市を見て、島で崖に上って、沖を船が通ったら叫ぶんだ」
「古代都市?」
「おじいさんの話さ。むかし、幸福な町が地震で沈んだ。何世紀も海底で眠っている。明け方の星が地球と別れを告げる朝、一瞬、古代都市が海の上にでてくる。そのとき、すべてが、時が止まる」
「時って?」
「砂浜でお手玉遊びをするこども。それが時だってさ。来るだろ?」
ピアノによるテーマ曲が流れ、タイトルバック。カメラはアレクサンドルの室内へと潜入する。カーテン越しに差し込む陽光。
ここで、映画のテーマ曲が流れてきて朗読用の原稿を手に、英明が登場する。
ゆっくりと椅子に腰かけ、ひと呼吸。そして英明が自作の「雪の宇宙」の朗読を始める。
ざっと、こんな具合で、佐々木英明の朗読詩演「明日の長さについて」が始まる。

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