カバは昨日から河野多恵子著「小説の秘密をめぐる十二章」を読んでいる。ことしも大学の文芸講座で講師を務めることになるかもしれないからだ。カバ自身の小説を書く勉強にもなると思い、興味深く読んだ。何しろ章立てがわかりやすく、理解しやすいのがいい。簡単に紹介しよう。
第1章 デビューについて
①はじめに ②「厚顔無恥な素人作家」? ③処女作が傑作になることもある ④山田詠美さんの場合 ⑤芥川は、谷崎はいかにデビューしたか ⑥「受賞」と「デビュー」は違う
第2章 創作事始め一 文章の呼吸とは何か
①小説における「作曲」と「演奏」の比重 ②創作の文章の呼吸とは何か ③よい文章は健康な脈拍を打つ ④翻訳文に日本語の呼吸を学ぶ
第3章 創作事始め二 作品はどう育てるか
①冒頭から書くこと ②「春琴抄」における牽き合いの部分 ③書き始めたら必ず完成させる ④日本語の横書きは禁物 ⑤作家の嫉妬について ⑥スランプから回復する方法
第4章 書きたいことを書く
①衝動が想像力を生む ②<書きたいもの>に飛びつかないこと ③平林たい子作品の一例 ④震災を描いた唯一の名作 ④精神的種族保存拡大のために ⑤小説は人生の指針ではない
第5章 才能をめぐって
①狭義の才能と広義の才能 ②作家は誠実な無頼であれ ③文芸誌から声がかかったら ④気ばかり焦れど原稿は― ⑤逃げてはならない
第6章 創作の方法一 名前のつけ方
①創作ノートはつくるべきか ②ノートに拘束されてはならない ③ナオミとヂョーヂー―「痴人の愛」の場合 ④珍しすぎず、ありふれず ⑤異和感のある名前の効用 ⑥名づけの失敗例
第7章 創作の方法二 標題のつけ方
①日本人の名前の場合 ②ネガティブな標題は避ける ③「太陽の季節」はポジティブな標題の見本だが ④「卍(まんじ)」の場合 ④スパイスの効果
第8章 創作の方法三 導入と終り方
①気配を伝える導入部 ②「猫と庄造と二人のをんな」の場合 ③ロックハーケンをどこに打ち込むか ④「細雪」の周到さ ⑤どう終わらせるかが大問題 ⑥「羅生門」の玉に瑕
第9章 小説の構造一 筋について
①「話の筋論争」 ②谷崎純一郎の反撃 ③自然主義系遺伝子は要注意 ③構造(構成)について ④吉行淳之介の技巧 ⑤紐は横端で縛ること
第10章 小説の構造二 一人称と三人称
①人称の選択は慎重に ②一人称は自分の首筋が描けない ③「嵐が丘」の場合 ④二重一人称という技巧 ⑤マゾヒズムと人称の関係 ⑥単元描写と復元描写
第11章 虚構および伏線
①貞之助の職業は? ②作品の中で変装した谷崎 ③モチーフは精神の内部から生まれる ④変装は隠し、フィクションは現わす ⑤伏線について ⑥<お妾の子>の意味するもの ⑦読者を誘う予感
第12章 文章力を身につけるのは
①散文で大切なのは動詞 ②比喩を用いた形容の場合 ③<話すように書く>べきではない ④本は買って読む ⑤剽窃の危険そのほか ⑥一言で言い表せる作家であってこそ
以上だが、目次を読んだだけで、小説を書くことのノウハウが適切に書かれていることがわかる。

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